事務所報 | 発行日 :令和7年1月 発行NO:No54 発行:バリュープラスグループ |
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【3】書籍の「題号」は不正競争防止法2条1項1号・2号の「商品等表示」に該当しないとした判例紹介(「東京地方裁判所令和5年(ワ)第70654号」)
文責:弁護士・弁理士 古莊 宏
はじめに
牧野富太郎博士(1862-1957/植物学者)は、高知県に生まれ、幼少より植物に興味を抱き、独学で植物の知識を身に付けた。その後、東京大学理学部の植物学教室への出入りを許可され、研究に打ち込み、日本植物分類学の基礎を築いた。現在でも研究者や愛好家の必携書となっている「牧野日本植物圖鑑(=図鑑)」を刊行。本件は、当該書籍の「題号」の表示が問題となった事件である。
なお、牧野博士は、NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとされている。
事実の概要
本件は、牧野富太郎の著作「牧野日本植物圖鑑(=図鑑)」を出版する原告が、原告の元従業員であり、被告書籍を出版する被告に対して、被告書籍に使用された「牧野日本植物圖鑑」という「題号」の表示は不正競争防止法2条1項1号または2号の「商品等表示」に該当し、当該題号を付した被告書籍の出版又は販売は、不正競争行為に該当するとして、差止めおよび損害賠償を求めた事件である。
判旨
『不競法2条1項1号及び2号は、「商品等表示」につき、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものと定義している。
そうすると、同各号にいう「商品等表示」とは、商品又は営業を表示するものであるから、出所表示機能を有するものに限られるというべきである。
そして、書籍には発行者等の表示が付されるのが通例であり、書籍の出所は、一般に上記発行者等の表示が示すものであるから、書籍の題号は、その書籍の内容を示すものにすぎず、出所表示機能を有するものとはいえない。
考察
これまでの判例においても、映画や書籍の「題号」は、内容を示すものであり、商品・営業の出所を示すものでは無いとされてきた(参考:超時空要塞マクロス事件(知財高裁平成17年10月27日)、宇宙戦艦ヤマト事件(東京地裁平成18年12月27日))。
今回の判例も、これまでの判例の流れの中にあると思料する。
おわりに
最後に、参考までに原告の当該図鑑と被告書籍を掲載しておく(引用元:最高裁HP)。
[原告の当該図鑑]


[被告書籍]


(令和6年12月作成: 弁護士・弁理士 古莊 宏)