事務所報 発行日 :令和2年12月
発行NO:No46
発行:バリュープラスグループ
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【2】論説:近年の商標の判例について(その8)

文責:弁理士 山本 進

 平素より格別のご厚情にあずかり、心より御礼申し上げます。

 小職は、審決取消訴訟を中心とした商標の判例要旨を「近年の商標の判例について」と題してシリーズでご紹介させて頂いております。

 旧溝上法律特許事務所の事務所報第39号からの通算で8回目となりますが、今回は、平成29年12月~平成30年4月の判例の中から下記5件を選びました。商標の実務をされている方の一助になることがありましたら幸いです。

1) H29.12.25 知財高裁 平成28(行ケ)10254 商標審決取消請求事件

 被告らが共謀して本件商標権を取り消す旨の原審決をさせたとして、原告が原審決に対し商標法58条1項に基づく再審請求をした事件の請求却下の審決が取り消された事例。

 本件訴訟において、適式の呼出しを受けたにもかかわらず、被告は本人尋問の期日に正当な理由なく出頭しなかったものと認められるから、民訴法208条に基づいて、被告らが共謀して本件商標権を害する目的をもって本件商標に係る登録商標を取り消す旨の原審決をさせたという原告の主張は、真実と認めることができると判断された。

2)H30.1.15 知財高裁 平成29(行ケ)10155 商標審決取消請求事件

 第6類「くい」を指定商品をとする立体商標について、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標に該当すると判断した審決が維持された事例。

 本願の立体的形状は、杭の形状として、需要者において機能又は美観に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであり、かつ、使用をされた結果自他商品識別力を獲得したものということはできないと判断された。

3)H30.3.7 知財高裁 平成29(行ケ) 10169 商標審決取消請求事件

 指定商品「コロッケ入りパン」等について、「ゲンコツコロッケ」の文字よりなる本件商標は「ゲンコツ」の文字よりなる引用商標と類似すると判断し、審決を取り消した事例。

 本件商標は「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえず、「ゲンコツ」は「コロッケ」よりも識別力が高く、需要者に対して強く支配的な印象を与えると判断された。

4)H30.3.22 知財高裁 平成29(行ケ)10170 商標審決取消請求事件

 「PPF」の文字よりなる本件商標は、「自動車本体の保護用プラスティックフィルム」等の指定商品との関係では普通名称に該当すると判断し、審決を取り消した事例。

国内外のメーカーのウェブサイト、雑誌の記事、ユーザーのブログ等における「PPF」の語の使用状況に照らせば、取引者・需要者の間で「PPF」の語は、上記商品の一般的な略称と認識されていたことが認められると判断された。

5)H30.4.11 知財高裁 平成29(行ケ)10208 商標審決取消請求事件

「マイナンバー実務検定」の文字よりなり、第41類「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関する情報の提供」等を指定役務とする本願商標について、商標法4条1項6号該当性を認めた審決が維持された事例。

 本願商標中「マイナンバー」の部分は、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章で著名なもの」に該当し、かつ、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるのに対し、「実務検定」の部分は、指定役務との関係では一般的表示にすぎないと判断された。

以 上

 

 (令和2年12月作成: 弁理士 山本 進)


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