事務所報 | 発行日 :令和2年8月 発行NO:No45 発行:バリュープラスグループ |
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【2】論説:論説:タイムスタンプ始めました~
文責:弁理士 大池 聞平
新サービスとして、「タイムスタンプサービス」を始めました。
タイムスタンプは、電子書類(PDFデータ)に対し“時刻情報”を付与するものです。タイムスタンプが付与された電子書類は、(1)スタンプ付与時点に“存在”していたこと、(2)スタンプ付与時点から“改ざん”されていないことの証明が可能となります。
タイムスタンプの利用目的としては、次の3つを挙げることができます。
(A)秘匿化するノウハウについて、先使用権の立証
(B)共同開発時における自社情報の証明、及び、相手先情報の混入防止
(C)特許等の無効資料のためのWEBページ・カタログの証拠化
(A)秘匿化するノウハウについて、先使用権の立証
特許出願をせずにノウハウとして秘匿化することを選択する場合、他社が同じ発明について特許権を取得するリスクがあります。この場合、所定の要件を満たせば、他社の特許権に対抗できる先使用権(先使用による通常実施権)が、ノウハウを秘匿化した企業に認めらます。しかし、その先使用権を巡って、いつ発明をなしたのか、いつから事業を開始したのか等について、訴訟・交渉の場面で争われることがあります。そのような事態に備え、タイムスタンプにより時刻情報を付与した形で、発明完成・事業開始などに関する証拠を残しておくことが有効です。
(B)共同開発時における自社情報の証明、及び、相手先情報の混入防止
共同開発を進めていく過程で、双方の情報が混ざり合い、ある情報についてどちらが情報源であるか問題になることがあります。そのような事態に備え、タイムスタンプにより時刻情報を付与した形で、相手先に提供した自社情報を残しておくことが有効です。
また、相手先の秘密情報が自社情報に混入して、どこまでが自社情報か分からなくなることは、秘密保持契約上の問題となり得ます。そのような事態に備え、タイムスタンプにより時刻情報を付与した形で、相手先から入手した情報を残しておくことが有効です。
(C)特許等の無効資料のためのWEBページ・カタログの証拠化
WEBページの公開日時は、JavaScript などのWEBページの構成データに残される場合がありますが、その日時が正確であることを証明することは容易ではありません。カタログの公開日時の証明も、同様に容易ではありません。そのため、WEBページ・カタログの公開日時を容易に立証できるようにするために、タイムスタンプが有効です。WEBページに新商品を掲載した日時を残すことで、その日時より後に出願された他社の特許権の無効資料となり得ます。
次に、“当サービスの利用方法”と“利用料金”について述べます。
当サービスのご利用にあたって、お客様にして頂くことは、タイムスタンプを付与したい電子書類(PDFデータ)を弊所に送付するだけです。弊所は、送付されたPDFデータにタイムスタンプを付与してお客様に送り返します。当サービスの利用方法は極めて簡単です。また、当サービスの利用料金は、1ファイル当たり税抜4,000円です。多数回のご利用をお考えのお客様には、ボリュームディスカウントの料金体系も準備しております。
次に、お客様で公証役場の確定日付をご利用される場合との比較について、当サービスは、時間・手間と管理面でメリットがあります。ここで、公証役場の確定日付を取得する場合、書類の印刷物・封筒を準備し、業務時間内に交渉役場に出向く必要があります。また、確定日付が押された封筒は開封できないため、後日に封筒内の書類内容を確認できるようにスペアの準備も必要です。それに対し、当サービスの利用方法は、上述したように極めて簡単であり、手間・時間を軽減できます。また、タイムスタンプを付与したPDFデータは、弊所でも管理しているため、万が一お客様の側でデータを紛失されても、弊所のデータがバックアップとなります。
タイムスタンプは、技術の権利化/秘匿化を使い分ける戦略的な知財管理の実践において有用なツールです。しかし、タイムスタンプは、まだまだ普及していないように感じています。特に中小・中堅企業では普及していません。そのような中で、弊所が当サービスを開始したのは、弊所のお客様の多くが中堅・中小企業であるためです。今後、知財戦略の高度化及びオープンイノベーションの進展に伴ってタイムスタンプの重要性が増す中で、弊所は、タイムスタンプの重要性・活用方法を発信してゆき、出願・権利化だけでなく秘匿化を含め、知財戦略全般をサポートしてまいります。